「明治6年、長野県松代区長の娘である横田英(水島優)は、富岡製糸場で働き始める。前年に建てられた世界最大規模の製糸工場で英を待っていたのは、レンガ造りの美しい建物や最新の機械、西洋式の労働環境だった。全国から集まった女性たちと共に、英は紅い襷(たすき)を掛けている一等工女を目指す。ある日、ウィーンから彼女たちを驚かせる知らせが舞い込む。」YahooJAPAN!映画より引用
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地元深谷にある映画館・深谷シネマ様で全国上映より少し遅れて鑑賞させて頂いた本作。
実際に私も過去に二度、群馬県富岡市にある世界遺産・富岡製糸場に観光に訪れたことがありますが建設に深谷出身の偉人である渋沢栄一が関わっており、また深谷市と富岡市は友好都市であるという事実も相まってぜひ観たいと思いました。
故に少し深谷市民視点寄りでの評論となることにご容赦を頂きたいのですが、物語の中で渋沢栄一を演じた豊原功補氏の演技がとても良いというのがまず初めの喜ばしい感想でした。少し男前過ぎやしないかと思ったのも束の間、観てると本人に似て見えてくる。姿勢が良く肝が座った演技。作品の主役は製糸場に勤務する工女たちなので渋沢栄一が出てくるシーンは実はそれほど多くはないですが、製糸場を裏から支えた重要人物として尾高惇忠を演じた西村まさ彦氏とともに抜群の存在感を示してくれた。
この記事用に描き下ろした絵も、なるべく劇中の人物に似せた上で物語の核をペンに込めて描くよう努めました
富岡製糸場を知らない観客を置いてけぼりにすることはなく、工場にまつわる様々な事柄を当時の写真や絵などを用いて解説を入れながら進むので映画ではあると同時に歴史としての映像資料にもなる作りになっています。再現映像に有名俳優達を起用した豪華なドキュメンタリー映画、と呼んでもいいかもしれません。
製糸場で必死に働いた主人公及び工女達の努力や姿勢ー気持ちが報われていくのが観ていて私の胸をとても熱くしました。出身地による差別を描いた部分で、不満を訴える主人公ら。それをなあなあにしようとする日本人上司たちに、「彼女達はとても頑張った」と皇女たちを擁護するフランス人の工女直属の上司。こういう問題は確かに日本だと「そういうものだから仕方がないのだ、嫌なら辞めろ」と流されがちなので、国民として考えさせられる良いシーンだと思いました。
ちなみにタイトルにもある「紅い襷(たすき)」とは、主人公たちが目指す最高地位「一等工女」のみが身に纏えるタスキのことを指します。柔道でいう黒帯、のようなものでパンフによりますと「紅い襷にそのような意味合いがあったかどうか実情は定かではなかった」とあり、物語上の「目的」として設定されたフィクションである可能性もあるとのこと。それほど少ない資料から製糸場に迫ったものだったということです。それでもなお、夢である「紅い襷」を目指して日々を頑張る主人公たちのひたむきさは胸を打つものでした。
ベテラン俳優陣そして映画初主演の水島優さんら芯の通った演技に支えられた堅実な歴史物映画。時折、カットインされる絵的に少し演出の足りない背景や挿入された文字のフォントがややチープさを感じさせる点など直せる部分も少しはあります。しかし映画としての本質はそれらを補っていたと感じます。
「紅い襷-富岡製糸場物語-」は、今月29日より5月12日まで深谷シネマ様http://fukayacinema.jp/?cid=4 にて再上映が決定しています。詳しくは深谷シネマ様のホームページをご覧になってください。
興味が湧いた方は是非、劇場のスクリーンで観られるこの機会をお見逃しなく!
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